会社員とフリーランスの違いとは?【月収50万円の場合の手取りを比べてみた】
企業とフリーランスチーム/事業者のマッチング事業も手がけているCrewto。
様々な案件に関わる中で、同じ業務内容でも会社員とフリーランスの場合とで報酬や待遇に違いがあることに気づきました。
この差は一体どこからくるのでしょうか?
会社員とフリーランスの働き方や報酬、手取りの違いについて、社労士事務所に勤務経験のあるCrewtoメンバーに聞いてみたことを、全3回の記事に分けてお伝えします。
目次
月収50万円のときのフリーランスの手取りと会社員の手取りの違いは?
例えば月収50万円のとき、フリーランスの手取りと会社員の手取りはどれくらい違ってきますか?
同じ収入でも、保険料や税金など控除されるお金やその金額はかなり変わってきますよ。
例えば、東京都在住の30代独身男性が月収50万円の場合は、会社員とフリーランスではこんなにも違いがあるんです。
◆収入50万円・東京都在住/30代/独身男性の場合をモデルとしたもの
会社員 | フリーランス | |
収入 | 50万円(勤務先からもらう給与) | 50万円 ※本計算では、フリーランスが受け取る報酬50万円から経費5万円を差し引き、45万円/月で保険料諸々を計算した。 |
経費 | —(なし) | 3~5万円 ※業種や仕事内容による |
雇用保険料 | 3,000円 | —(なし) |
健康保険料 | 健康保険(協会けんぽなど)25,000円 | 国民健康保険 44,716円 |
年金保険料 | 厚生年金 45,750円 | 国民年金 16,520円 |
所得税 | 16,833円 | 34,125円 |
住民税 | 25,791円 | 35,708円 |
手取り額 | 383,626円 | 318,931円 |
*シュミレーション参考:税金・社会保険料・手取り計算シミュレーション(あなたの給料を入力してパッと計算) | 税金・社会保障教育
*参照:令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京)
月収は同じでも経費・税金で大きな差がつく
会社員もフリーランスも、受け取る報酬はどちらも同じ50万円なのに、手取り額はそれぞれ31万円と38万円と、7万円ほどの差があるんですね…!この差はどこからくるんですか?
大きな差となっているのは「経費」と「所得税・住民税」ですかね。
会社員なら仕事に必要な設備や物品は会社が用意してくれますが、フリーランスは仕事に必要な物品は基本的に自分で用意しないとですよね。
今回は経費が5万円で計算されていますが、同じフリーランスでも業種によって経費の金額はかなり違いがありそうです。
そうですね。フリーランスの場合は収入からこの経費を引いた額が「所得」となり、所得額に応じて保険料や税額が計算されます。
会社員の場合は、「給与所得控除」といって、年間の収入に応じて決められた金額が控除されます。分かりやすくまとめると以下のような感じです。
▼会社員とフリーランスの「所得」の計算方法の違い
会社員 | フリーランス | |
所得 | 収入(給与)- 給与所得控除額(最低額55万~) | 収入 - 経費 |
なるほど。他にはどんな点が違ってきますか?
保険料や年金についても、金額や仕組みなどがかなり違います。それぞれ詳しく見ていきましょう。
雇用保険は「雇用されている人」のための制度
まずは、雇用保険の違いについてです。
▼会社員とフリーランスの「雇用保険料」の違い
会社員 | フリーランス | |
雇用保険料 | 3,000円 | —(なし) |
会社員は雇用保険料が3,000円ほどかかっていますが、フリーランスは雇用保険料ががかからないんですね。
雇用保険料は、会社に雇用されている人だけが加入する国の保険制度だからです。
通常、会社に勤めている人で労働時間などからみて雇用保険に加入する資格を満たしているなら、強制的に加入しなくてはいけないことになっていますよ。
なるほど。フリーランスは会社に雇用されて働いているわけではないから、雇用保険に加入して保険料を支払う必要はないんですね。
そうなんです。なので保険料を徴収されずに済みますが、デメリットもありますよ。例えば、雇用保険に加入していないことで以下に挙げるような手当を受けられないんです。
▼フリーランスが受給できない手当(雇用保険から支給されるもの)
・失業手当
・育児休業手当
・休業補償手当(コロナや事業不振など会社都合で仕事ができなかった時の補償)
仕事を辞めたり育児で働けなくなってしまっても、フリーランスは手当がもらえないんですね。
そうなんです。雇用保険はあくまでも「雇用されている人」のための保険だからです。
フリーランスは、労働者であれば利用できる「雇用保険」の恩恵が受けられないという点は注意が必要ですね。
健康保険は「扶養」の仕組みがある会社員のほうが断然お得
健康保険にはどんな違いがありますか?
基本的に、会社員は会社の健康保険(協会けんぽなど)に加入し、フリーランスや自営業者は国民健康保険に加入することになってます。
報酬の額によって保険料が算出される仕組みはどちらも同じですよ。
保険料にはかなりの差があるんですね。
▼会社員とフリーランスの「健康保険料」の違い
会社員 | フリーランス | |
健康保険料 | 健康保険(協会けんぽなど)25,000円 | 国民健康保険 44,716円 |
そうなんです。これは保険料の支払い方が違うからです。
会社員の場合は健康保険料を会社と本人とで折半して半額ずつ支払いますが、フリーランスは国民健康保険料の全額を一人で負担しなくちゃいけません。
だから同じ報酬でも会社員とフリーランスで2倍近くの金額の差があるんですね…
はい。支払い方のほかにも制度上の違いもありますよ。
大きな違いで言えば、会社員の社会保険には「扶養制度」があります。このおかげで、配偶者や子供など被扶養者(扶養される人)が何人いても加入者だけの保険料負担で済むんです。
会社の健康保険に加入していれば、旦那さん一人の保険料を支払うだけで奥さんや子供も健康保険の恩恵を受けられるということですね!
そうです。収入などの条件を満たせば保険料は変わらないまま、自分の親や祖父母・孫など何人でも扶養に入れることができます。
それはかなりお得ですね!扶養する家族が多い人には嬉しい仕組みですね。
そうですよね。ですがフリーランスが加入する国民健康保険には、この「扶養」の仕組みがありません。
同じ世帯に国民健康保険に加入する人がいればその人数分だけ保険料がかかってしまうんです。
奥さんや子供、親など扶養する家族の人数が多いと、保険料負担はその人数分だけ大きくなってしまうということですか?
そうなんです。「自分が一家の大黒柱」というフリーランスの人は注意が必要ですね。
フリーランスの年金保険料は定額。でも・・・?
さっきの健康保険と比べて、年金保険料はフリーランスの方がずっと安くなっていますね。どうしてですか?
▼会社員とフリーランスの「年金保険料」の違い
会社員 | フリーランス | |
年金保険料 | 厚生年金45,750円 | 国民年金16,520円(令和5年) |
健康保険のときと同じで、年金も会社員とフリーランスとで加入する制度が異なるからです。
会社員は「厚生年金保険」、フリーランスや自営業者は「国民年金」に加入することになっています。
保険料の計算や支払い方も会社員とフリーランスとで違ってきますか?
はい。会社員の厚生年金は報酬に応じて支払う保険料が変わります。保険料を支払うときは健康保険のときと同じで、会社と折半した額を負担する仕組みです。
一方で、フリーランスの支払う国民年金保険料は所得に関わらず、誰でも金額は一定です。
どれだけ所得が増えても年金保険料は一定なのですね。この点はフリーランスの方がお得ですね。
そうですね。収入が多いフリーランスほど、ここはお得に感じるかもしれません。
ただ、年金支給時はフリーランスは「基礎年金」のみが支給され、会社員には「基礎年金額」に「厚生年金分」が上乗せされて支払われる点には注意が必要ですよ。
どういうことですか?
制度を分かりやすく図解すると以下のような感じです。
年金制度は2階建てになっていて、フリーランスは「国民年金」の1階分だけ、会社員は「国民年金」と「厚生年金」を併せて2階部分まで支払っているので、会社員は年金支給のときに2階の「厚生年金分」まで貰えるという仕組みなんです。
◆公的年金制度の仕組み
会社員は2階建ての年金制度で支払いが多い分、あとで貰える年金も多いということですね。
その通りです。
経費を計上することは節税にも繋がる
会社員とフリーランスとでは他にも違いがありますよ。
例えば会社員の場合は、仕事に必要な物品は会社が用意してくれますよね。でもフリーランスは全て自分で購入して揃える必要があります。その購入にかかる費用を「経費」と呼びます。
その「経費」って仕事の内容によってどれくらいかかるか変わってきますよね。例えば物の仕入れが必要な仕事をしている場合は、自己負担する金額が大きいですよね。
そうですね。ですが、経費は確定申告の際に収入から控除することができるので、経費が多ければ多いほど節税効果は高いと言えますよ。
経費が掛かっているならきちんと計算して申告した方がお得ということですね!経費に算入できる費用にはどんなものがありますか?
一例ですが、ざっくりと挙げると以下のようなものが経費となりますよ。
▼フリーランスが「経費」として計上できる費用
・PC購入費
・カフェ利用代(最小限の飲食費に限る)
・家賃や水道・電気代の一部(家で仕事をしている人に限る)
・システム利用料(会計ソフト、エンジニア向けソフト)
・打ち合わせの際の食事代
・接待費
・消耗品
・iDeco
・国民年金基金
・(小規模企業共済) ※経費ではなく所得控除
PCや筆記用具などはもちろん、打ち合わせ代やカフェで仕事をしたときの飲食代、自宅で仕事をしている人は家賃や電気代・水道代の一部も経費として計上することができますよ。
基本的には「仕事・業務の遂行に必要な出費」ということですね。
そうですね。少し珍しいところで言うと、「iDeco(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金の掛け金」も経費に計上できるので、国民年金だけでは不安という人はこの年金制度を利用すると良いかもしれません。
また、「個人事業主の退職金制度」とも言われる小規模企業共済への加入も節税効果がありますよ。
小規模企業共済の掛金は、iDecoや国民年金基金と違って経費での計上はできませんが、掛金の全額が所得控除に使えるんです。
(厳密には経費ではないけれど)経費と同じように、掛金として支払った金額を収入から差し引けるということですか?
その通りです。積み立てた掛金は将来、退職金として受け取ることができます。
2023年10月からは「インボイス制度」も始まるので、いま紹介したような税制についてはしっかり押さえておきたいところですね。
インボイス制度が始まるとどんなことが変わるんですか?
簡単にいうと、これまで消費税の納税が免除されていた売上高1,000万円未満の免税事業者が課税事業者になることが求められます。
小規模事業者はこれまで免除されていた消費税の納税義務が発生するということです。これはフリーランスにとって一番大きい変化かもしれないですね。
売上のうちの1割にあたる金額について、新たに納税の義務が出てくるということですね…
そうなんです。売上高1,000万円未満のフリーランスの人は、実質的に納める税額が1割程度増えることになります。節税についてはこれまで以上にシビアに考えた方が良さそうですね…!
<第2回へ続く>
Crewto®は、個人ではなくチームとしてのキャリアの可能性を考え、チーム単位で採用や業務の受注・発注ができるビジネスマッチングサービスです。
慣れ親しんだメンバーと「チーム」を組んで、求人や仕事に応募してみませんか?